更新日:2026年7月17日|カテゴリ:初期設定・使い方
「NASでDockerが動く」と聞いても、初心者にはピンとこないかもしれません。でも一度使い始めると、NASが単なるファイルサーバーから「自宅のミニサーバー」に変わります。
結論から言うと、SynologyのNAS(DS224+などのPlusシリーズ=x86 CPU搭載モデル)があれば、Container Managerアプリを使って簡単にDockerコンテナを動かすことができます。専門知識がなくてもGUIで操作できるので、初心者でも始めやすいです。
SynologyではDockerを「Container Manager」というアプリ名で提供しています。以降、アプリ名としては「Container Manager」、技術・機能としては「Docker」と表記します。
この記事でわかること
- NASでDockerを使うと何ができるか
- Docker対応NASモデルの選び方
- Container Managerの導入手順
- 初心者におすすめのDockerコンテナ3選
NASでDockerを使うとできること
| 用途 | Dockerコンテナ例 | できること |
|---|---|---|
| 広告ブロック | Pi-hole | 自宅ネットワーク全体の広告・トラッキングをブロック |
| スマートホーム | Homebridge | Siri非対応のスマート家電をApple HomeKitで操作 |
| メディアサーバー | Jellyfin | 動画・音楽を自宅サーバーからストリーミング再生 |
| パスワード管理 | Vaultwarden | 自宅サーバーで動くBitwardenサーバー |
| RSSリーダー | FreshRSS | 自前のRSSリーダーを立てる |
| VPNサーバー | WireGuard | 外出先から自宅LAN全体に安全にアクセス |
これらはほんの一例です。なお「NASでDocker」と言っても、GUIで操作する管理アプリの名前はメーカーごとに違います。
| メーカー | Docker管理アプリ | 対応の目安 |
|---|---|---|
| Synology | Container Manager(旧Docker) | Plus系(x86)はフル対応・RTD1619B搭載ARM機も軽量用途で対応 |
| QNAP | Container Station | 多くのモデルで対応(Synology×QNAP徹底比較) |
| ASUSTOR | Docker(App Central) | 対応モデルで利用可能 |
本記事では、もっとも普及しているSynology(Container Manager)を軸に解説します。Docker Hub(世界最大のコンテナリポジトリ)には数十万のコンテナイメージがあり、アイデア次第でNASをさまざまな用途に使えます。(外部アクセスをポート開放なしで実現したい方はTailscale×Dockerの解説記事もご覧ください)
Docker対応NASモデルの確認
重要:Synology NASは機種によってDockerの動かし方が変わります。x86(Intel/AMD)搭載のPlus系ならフル機能で動かせ、RTD1619B搭載のARM機(DS223j等)もDSM 7.2以降はContainer Managerが利用可能です(ただし動くのはarm64対応イメージのみで、メモリ1GBのため軽量用途向き)。
| モデル | CPU | Docker対応 |
|---|---|---|
| DS224+ | Intel Celeron J4125(x86) | ◎ フル対応 |
| DS225+ | Intel Celeron J4125(x86) | ◎ フル対応 |
| DS423+ | Intel Celeron J4125(x86) | ◎ フル対応 |
| DS923+ | AMD Ryzen R1600(x86) | ◎ フル対応 |
| DS223j | Realtek RTD1619B(ARM64) | ○ 対応(DSM 7.2〜・メモリ1GBで軽量用途向き) |
なお、DS224+の後継として2025年発売のDS225+(Intel Celeron J4125・2.5GbE対応)も同じくDocker対応です。これから購入するなら後継のDS225+も候補の一つになります。総合的な機種比較はNASおすすめランキングも参考にしてください。
モデル名に「+」が付くPlusシリーズはx86(Intel/AMD)CPU搭載で、Dockerを高負荷でも快適に使えます(例:DS224+はIntel Celeron、DS923+はAMD Ryzen)。一方、「J」がつくエントリーモデル(DS223jレビュー参照)も、DSM 7.2以降はContainer Managerに対応しました。対象はRTD1619B搭載機(DS223j・DS223・DS423)です。ただしメモリ1GB・arm64対応イメージ限定のため軽量コンテナ向きで、複数コンテナの同時運用やamd64専用イメージが必要ならPlusシリーズが安心です。最新の対応状況はSynology公式のContainer Manager対応モデル一覧で確認できます。
他メーカーではx86 CPU+DDR5 8GBを搭載するUGREEN NASync DXP2800も、amd64イメージがそのまま動く実用的な選択肢です(後述のGUI手順はSynology Container Managerの画面ですが、他メーカーの管理アプリでも「イメージ→コンテナ→ポート/ボリューム設定」の流れは共通です)。
なお、NASを買ったばかりでこれから初期設定をする方は、先にNASの初期設定ガイドでDSMのセットアップを済ませておくと、Container Managerの導入がスムーズです。
Container Managerの導入手順
- DSM管理画面にログイン
- 「パッケージセンター」を開く
- 検索欄に「Container Manager」と入力
- 「インストール」をクリック
- インストール完了後、メインメニューに「Container Manager」が表示される
Container ManagerはDSM 7.2以降でDockerと仮想マシン管理を統合したSynology公式アプリです。以前の「Docker」アプリから改名されています。
インストール後:GUIでコンテナを作成する手順
Container Managerをインストールしたら、実際にコンテナを動かすまでの流れは次のとおりです。コマンドを打たなくても、すべてGUIで完結できます。
- イメージの取得:Container Managerを開き、[レジストリ]タブで使いたいイメージ名(例:pihole/pihole)を検索してダウンロード。タグは通常「latest」のままで問題ありません。
- コンテナの作成:[イメージ]タブでダウンロード済みのイメージを選び、「実行」をクリックするとウィザードが始まります。
- 一般設定:コンテナ名を分かりやすい名前に変更し、「自動再起動を有効にする」にチェックを入れましょう。これでNASの再起動後もコンテナが自動で立ち上がります。
- ポート設定:ローカルポートとコンテナポートの対応を指定します。ローカルポートが「自動」のままだと起動のたびに番号が変わるので、固定値(例:8080)への変更がおすすめです。
- ボリューム(ストレージ)設定:「フォルダの追加」でNAS上のフォルダ(例:docker/pihole)を作成し、コンテナ内のパスにマッピング。ここを設定しないと、コンテナを作り直したときに設定やデータが消えるので要注意です。
- 環境変数の設定:タイムゾーン(TZ=Asia/Tokyo)や管理パスワードなど、イメージごとに必要な環境変数を入力しましょう。必要な変数はDocker Hubの各イメージページに記載されています。
- 起動と確認:概要画面で設定を確認して「完了」をクリックすればコンテナが起動。[コンテナ]タブで状態が「実行中」になっていればOKです。
うまく起動しない場合は、[コンテナ]タブで対象を選んで「ログ」を確認しましょう。環境変数の不足やポートの重複が原因であることがほとんどです。
初心者におすすめのDockerコンテナ3選(用途別の深掘り)
前段の用途表で6つを紹介しましたが、「まずどれから?」と迷ったら、Pi-hole→Jellyfin→WireGuardの順で試すのが定番です。それぞれ2〜3分でGUIから立ち上がり、生活の変化を体感しやすい3本を、リソース感まで含めて掘り下げます。
① Pi-hole(広告ブロッカー)
自宅ネットワーク全体のDNSサーバーとして動作し、広告・トラッキングドメインをブロックしてくれます。スマホ・TV・PCすべての広告を一括でブロックできるため、家族全員が恩恵を受けられます。
消費リソース感: メモリ200MB前後・CPU負荷ほぼゼロ(DS223jの1GBメモリでも常時稼働で問題なし)。DHCP設定の変更(ルーターのDNSをNASのIPに向ける)だけで導入完了です。
起動コマンド例(NASにSSH接続し、sudoを付けて実行。Container ManagerのGUIでも同等の設定が可能です。詳細はPi-hole公式ドキュメント参照):
docker run -d --name pihole \
-e TZ=Asia/Tokyo \
-p 53:53/tcp -p 53:53/udp -p 8080:80 \
-v /volume1/docker/pihole/etc:/etc/pihole \
--restart=unless-stopped \
pihole/pihole:latest
② Jellyfin(自宅メディアサーバー)
自宅NASにためた動画・音楽を、スマホ・TV・PCから自宅サーバー経由でストリーミング再生できるオープンソースのメディアサーバーです。Netflixの自前版と考えると分かりやすく、家族の思い出動画や購入した音楽をまとめて配信する用途に向きます(本格運用はPlex/Jellyfin比較も参照)。
消費リソース感: 4K動画のトランスコード(形式変換)はCPU負荷が高いため、Intel Quick Sync対応のx86機(DS225+/DS423+など、Celeron J4125系)が快適です。DS923+はAMD Ryzen R1600搭載でQSV非対応のためハードトランスコードには向きません(1080p直接再生は可)。ARM機でも1080p直接再生は動きますが、複数端末同時視聴ならメモリ4GB以上を推奨します。
③ WireGuard(VPNサーバー)
外出先から自宅LAN(NAS・PC・スマート家電)へ暗号化トンネルで安全にアクセスできる高速VPNです。カフェの無料Wi-Fiや海外出張先でも、自宅にいるのと同じ感覚でNASのファイル・アプリを触れます。
消費リソース感: メモリ50MB程度・CPU負荷ほぼゼロ。ただし外部から接続するにはルーターのポート開放(UDP 51820など)とセキュリティ設計が必要で、初心者は先にTailscale×Docker(ポート開放不要)から試すのも手です。
そのほかの定番: Homebridge・Vaultwarden
- Homebridge: SwitchBot・Merossなど Apple HomeKit非対応のスマート家電をSiri・ホームアプリから操作できるブリッジ。Container Managerの[レジストリ]タブで「homebridge」を検索し、「homebridge/homebridge」を選択してデプロイするだけで起動できます。
- Vaultwarden: クラウドに預けたくないパスワードを自宅NASで管理できるBitwarden互換サーバー。iPhone・WindowsのBitwardenアプリからそのまま接続でき、月額課金ゼロで運用できます。
Dockerを使う際の注意点
- RAM・CPU消費に注意:複数のコンテナを同時に動かすとNASのリソースを消費し、ファイル転送速度が落ちることがあります
- ポート競合に注意:コンテナが使うポート番号が既存サービスと競合しないよう確認が必要です
- データはボリュームに保存:コンテナを削除するとデータが消えます。重要なデータは必ずNASのボリューム(例:/volume1/docker/)にマウントしてください
- CPUアーキテクチャに注意:ARM機(DS223j等のRTD1619B搭載機)はDSM 7.2以降Container Managerに対応します。ただし動かせるのはarm64対応イメージのみで、amd64(x86)専用イメージは動きません。x86のPlus系なら大半のイメージがそのまま動きます
- 外部公開時はセキュリティ設定を:VPN(WireGuard)やパスワード管理(Vaultwarden)を外部に公開する場合は、ポート開放や認証設定を自己責任で適切に行ってください。設定不備は情報漏えいのリスクにつながります
FAQ(よくある質問)
Q1. DockerとContainer Managerは何が違う?
Container ManagerはSynologyがDocker Engine上に作ったGUI管理ツールです。内部ではDockerが動いており、Docker Hubのイメージをそのまま使えます。DSM 7.2からDocker(旧アプリ名)がContainer Managerに統合されました。
Q2. DS224+のRAMは2GBで足りる?
軽量コンテナ1〜3本程度なら問題ありません。Pi-hole + Homebridge程度であれば2GBで快適に動作します。多数のコンテナを同時に動かす場合は4〜6GBへの増設を検討してください。Synology機はメーカー動作保証の観点から純正メモリ(DS225+はD4ES01-4G等・DS923+はD4ECSO-2666-16G等)が推奨で、詳細は公式互換性リストで機種ごとの型番を確認してください。
Q3. Docker ComposeはSynologyで使える?
DSM 7.2以降のContainer ManagerではYAML形式のDocker Compose設定ファイルをGUIから直接読み込めます。コマンドラインを使わずにCompose環境を構築できます。
Q4. Dockerのコンテナが起動しない場合は?
Container Managerのログ画面でエラーメッセージを確認してください。ポート競合・パス指定ミス・メモリ不足が主な原因です。エラーメッセージをそのまま検索すると解決策が見つかることが多いです。
Q5. QNAPでもDockerは使える?
使えます。QNAPには「Container Station」というDocker管理アプリがあり、機能的にはSynologyのContainer Managerと同等です。TS-233(ARM)でも一部のARMネイティブイメージは動作します。SynologyとQNAPどちらを選ぶかはSynology×QNAP徹底比較を参考にしてください。
Q6. DS223jなどARMのエントリー機でもDockerは使えますか?
はい、使えます。DSM 7.2以降、Realtek RTD1619B搭載機(DS223j・DS223・DS423)はContainer Managerに対応しました。ただし動かせるのはarm64対応イメージのみで、amd64(x86)専用イメージは動きません。メモリも1GB(DS223j)と小さいため、Pi-holeなどの軽量コンテナ向きです。複数コンテナの本格運用やamd64イメージが必要なら、x86のPlus系(DS224+/DS225+)を選んでください。最新の対応状況は必ずSynology公式のContainer Manager対応モデル一覧で最終確認しましょう。
Q7. Dockerを本格的に使うならどのモデルを選べばいい?
複数のコンテナを快適に動かすなら、メモリに余裕のあるx86のPlus系がおすすめです。SynologyならDS225+(2GB・増設可)やDS923+(AMD Ryzen)が定番で、amd64イメージがそのまま動きます。多数のコンテナを同時に動かすなら4ベイNASおすすめで紹介するDS425+等も視野に入ります。軽量コンテナを1〜2本試すだけならエントリー機でも始められますが、後から使い道が増えることを考えると、最初からPlus系を選んでおくと拡張で困りにくいです。
まとめ
- Container Managerは「+」付きPlus系(x86)が同社ラインナップ内で最も快適。DSM 7.2以降はRTD1619B搭載のJ系(DS223j・DS223・DS423)も対応するが、メモリ1GB・arm64イメージ限定で軽量用途向き
- 導入はパッケージセンターからContainer Managerをインストールするだけ。DSM 7.2以降ならCompose(YAML)も使える
- 初心者はPi-hole・Jellyfin・WireGuardの3本を試すと、生活の変化を体感しやすい
- コンテナのデータはボリュームマウントで永続化し、NAS自体のバックアップも忘れずに
本格的にDockerを使い倒すなら、メモリに余裕があり2.5GbEにも対応するDS225+のようなPlus系が安心です。複数コンテナを同時に動かすなら4ベイNASおすすめも視野に入ります。総合的な機種比較はNASおすすめランキングも併せてご覧ください。